住宅を取り巻く状況は日々変化の波に洗われています。

インターネットからの情報も加わり、その勢いは加速しているようです。

このような中、私たちが「求める住宅」はどこに焦点を結ぶのでしょう。

自問しながら、考えをまとめる試行をしています。













1.「家の寿命を知る」

日本の住宅の平均寿命は30年弱といわれている。
そろそろ壊れるから建て替えましょうよ、といった理由より、使い勝手が悪くなったからとか古びてイヤだということで建て替えていることが多いようですね。30年ローンを組んで払い終わったらまた新しい家を建てますということが今まで行われてきました。あるデータによると日本人の生涯所得の30%が住宅取得費であるといわれていますから住宅にかける情熱?と負担はたいへんなものです。
 今では少なくなった農村の民家や一部の町屋は100年以上の年月を経てもますます魅力的で愛着を持って使われているのを見ると、建て方次第で100年近くは保つんだと思うとともに、こういう建て方もいいなぁと思います。自分の代の後、手もかけ必要に応じて改修もして三世代くらいは保つ家をつくるという方法。トータルコストもきっと安いし、なんといっても家族の記憶が受け継がれます。
 スローライフが意味をもつ時代にどんな寿命をもつ家を造るのか、家づくりはそこから考えたいものです。








2. 「街並みと景観」

 不況といわれる昨今でも、新しく住宅団地として開発される分譲地は後を絶たないですね。
さて、かって分譲された宅造地は年月を経て、どれだけ魅力的な景観をもつ住宅地になっているでしょうか。 見るところ、今でも建物周りの緑地整備がされていない家も多く、魅力的な景観になっていないところが多いように思います。個人々に家の周りの景観整備が任されていることが原因でしょうか。
 分譲地によっては「建築協定」といって景観整備の決まり事を守らなければならない制約のあるところもありますが、この制約が利くんですね。「この住宅地はなかなかいい感じだなぁ」と歩いていて気持ちがいい街並みができあがります。景観規制のない分譲地は自由がきくけれど、数十年後に魅力的な景観になりにくい、というところに景観づくりの本質があるように思います。

 現代は各自の自由意志が尊重され、その結果さまざまなスタイルの住宅が混在しています。 景観とは集合したものの形、一人でつくることのできないもので、いい景観は集団の合意ががないと実現不可能です。緑地空間の整備や規制はさまざまなスタイルの住宅を包み込んでまとまりある環境を演出してくれますが、いい景観のある環境がほしいと求める人々の合意がないと実現しないんです。
 素敵な景観のある環境のなかで住みたいということは他人と共有する環境を持つということになりますね。 責任と自覚もそこには出てきますから、ちょっとシンドイこともあるかもしれませんね。








3. 「家の形もいろいろ」

 最近、デザイン住宅が注目されています。そう言えば、ケーブルテレビ富山の「こだわり家」という番組で 8人の地元の建築家が設計した住宅が放映されたり、BBTやKNBでも同様の企画の放映もありましたね。従来 のハウスメーカーが拾いきれなかったジャンルであり、そういうものにも一定の需要が出てきたようです。
 考えてみれば、今、家を立てようと思えば驚くほど多様なメニューが用意されています。家の様式は和風、 洋風、両者折衷などと百花繚乱。工法では在来工法、2×4、工業化住宅、ログハウスなどなど。性能や仕様 では高気密高断熱住宅、環境共生住宅、自然健康住宅など常に新しい展開が出てきます。さらに発注先では ハウスメーカー、工務店、設計事務所など、ほんとうにさまざまです。
 しかし選択肢が多様なのは良いことばかりではないかもしれません。戦前まではどの家もほぼ同じ形、同じ 間取りでした。一様の規範の社会だったからです。現代は個人の自由の名の下に多様性が認められている社会 ですが、選択肢が多い分だけ、住宅ひとつと言えども私たちが等身大の確信を持つことはなかなか大変です。








4. 「私たちが受け継いでいるもの」

 住まいはいつの世でもその時代の生活を映し出す鏡です。古い民家を見れば、その時代の生活の様子を見て とることができますね。そんな感慨を持ちながらよく見てみると、現代の私たちとは違った生活のあり方も散 見できるのですが、以外と「昔も今とあんまり変わらないなぁ」と思うことも多いはずです。住まい方や暮ら しの行為は案外保守的で営々と受け継いでいることが多いのです。
 一方、生活の器としての住宅の造られ方はどうでしょうか。つい最近まで?(40年位前まで)はほとんど 変わることのない工法で造られてきました。大きなビルなどは別ですが、小建築としての住宅はその地域で 調達できる木や草や土を材料としてその地域の風土や習慣にあった形が完成されていて、誰もが同じタイプの 住宅を造ってきたのです。そしてそのことを気にする人もいませんでした。かって、住まいとはそのような 状況を気にすることもないほどその保守性を受け継いでいたのです。
 さて、現代の住宅の造られ方はどうでしょうか。端的に言えば、生活の変容、暮らしの多様性が現代には 溢れています。そしてそれに応えるように住宅のメニューも多様な展開を見せ開発が進んでいます。
 しかし、これからの家づくりを考えるとき、次から次へと開発される住宅の多様な展開(=生活の変容) という面にばかり踊らされず、暮らしの保守性ともいうべき自身が受け継いできた変わらないもの(=精神性 )との差異を埋める作業が現代の家づくりでは必要と思うのは私だけでしょうか。





5. 「省エネ住宅をつくろう(1)」

 日本の省エネルギー対策は70年代に起きた石油ショック以来進歩しましたが、その後も日本のエネルギー消費は拡大を続けています。 地球温暖化を防ぐためには二酸化炭素の削減が求められており、京都議定書で日本は2008年から 2012年の平均値で温室効果ガスを6%削減することになっていますが、2001年度の二酸化炭素総排出量は12億1400万トン(二酸化炭素換算)と、 1990年比で8.2%増加しています。とくに増加しているのが家庭やオフィスなどの民生部門と運輸部門です。

  さて、 「省エネ」と一口に言っても非常に幅広い分野にいきわたります。ここでは住宅という分野に限って、「省エネ」を考えてみましょう。
まず私たち作り手が考慮することには…
 ・地元の木を使うなど、製造エネルギーの多くかかる建築材を使わない
 ・リサイクルできる、また解体後も自然に帰るような材料を使うなど、建築廃材がなるべくでないようにする
 ・100年住宅のように長く使える建築をつくる(20〜30年で建て替えることのないように)
 ・ 風向きなどその土地の自然特性を知り、それを快適に取り入れられるようにして人工のエネルギーをなるべく使わないようにする    
…など、さまざまな建築的対策がありますが、どれも基本は「もったいない」ことをしないということですね。ひとつ建てるにもお金も材料もたくさん必要な家づくりだからこそ、「省エネ」に配慮したやさしいものでなければいけませんね。

 


6. 「省エネ住宅をつくろう(2)」

 では家庭生活の中で「省エネ」を進めるには、どんな点に留意したらいいでしょうか。
  近年電化製品の省エネはどんどん進んでいて、冷蔵庫1リットルあたりの年間消費電力は1981年に2.76kWhであったのが、2001年には0.75kWhと 3分の1以下になりました。省エネ基準達成率108%の8畳用のエアコンと、達成率55%のものをくらべると、電気代が年間2万円近くトクだという 試算もあります。省エネ家電に買い替えたほうが、エネルギーの節約になると同時に、家計にもやさしいケースは多いのです。省エネ性能を消費者が簡単にチェックできるようなラベリング制度も登場しました。また自家用車なども、 燃費のよいものを選ぶといいですね。
  家庭で使われる電気のベストスリーはエアコン、冷蔵庫、照明と言われます。エアコンは設定温度を一度変えるだけで大きな効果が得られます。 また見逃せないのが待機電力で、家庭の全消費電力の約1割を占めます(これにはまとめて電源をOFFにできるテーブルタップなどが重宝)。

 完成して住まい始めた住宅のなかでエネルギー消費がもっとも多いのは冷暖房と給湯です。 住宅の「省エネ」にとって肝要なのはこの二つ(冷暖房と給湯)にかかるエネルギー消費をいかに少なくするか、ということにつきます。そこで 次項からは、この二つ(冷暖房と給湯)の「省エネ」をはかるため、夏に日射(熱)を家に入れない工夫、冬には室内熱を外に逃がさない工夫について順次紹介していきましょう。