最近、周囲からのプライバシーを守るために「コートハウス」の注文が多くなっています。そうするとどうしても外観が閉鎖的になって、人間の臭いのしない冷たい感じになりがちです。向こう三件両隣ではないですが縁側を通じたご近所付き合いというのもなかなか良いもので、そんな家にも憧れますが実体はそんなに単純なものではありません。
多少は生活感が外部に表出するような家の方が人間と同じで周囲からみて友好的な良い関係性が築けるようにも思います。コートハウスのように閉じた家が連続する街並よりも生活感を少し感じられる家が集合している街並の方が歩いていても気分が良いでしょう。しかし、そんな住居群が存在するためには家々が街並の中で自立できるようなルールがその街に定着していなくてはなりません。現代ではコレも難問ですね。

今回の家は「コートハウスはあまり好きではありません。とはいってもプライバシーは守りたいです」という建主さんの話をヒントに現代版の生活感が少し外に出てくるような外観の家を目指しました。明るい家が好きです。芝生の庭に出てお茶もできるようなリビングも好きです。プライバシーも守りながらそんな家ができるのか、と一時は疑念もありましたが、それを助けてくれたのが最近のガラスです。今回採用したLow-Eガラスは日中は外部から見てもほとんど内部が見えません。しかも遮熱性、断熱性がある程度担保できる性能なので建物の断熱気密性能を考慮しながら熱環境を検討してみると何とかO.K。
プライバシー確保も室内の採光も生活感もガラスを通して出てくるので願ったり叶ったりでした。もちろんガラス面の夏の日射は防ぎたいので深い庇を1階、2階の両方に付けることで解決。南面の外観は迫力満点のガラスハウスですが、実は性能もちゃんと確保しているという現代版の家の一つの解答です。
外観に劣らず平面プランニングも建主さんと数十回の繰り返しの打合せをして出来上がったものです。納得のプランに仕上がったようで「大満足です」というお話しを完成した時に小声で聞かせてもらいました。

※Low-Eガラス:正確にはLow-E複層ガラス(Low Emissivity)
        特殊金属膜をガラスにコーティングした低放射ガラスのこと
        この金属膜のために外部から内部が見えにくくなる特徴がある
        (そうならない透明タイプのガラスもある)